スマホ向け戦略部品着々、村田製作所、樹脂材料VB買収、「メトロサーク」、3年後1000億円超。(2016/11/02)

村田製作所は1日、樹脂材料ベンチャーのプライマテック(東京・世田谷)を買収したと発表した。同社は「液晶ポリマー電子材料」と呼ばれる高機能ポリマーをフィルム加工するメーカー。村田はセラミック製の電子部品で世界トップシェアを持つが、樹脂材料と既存事業の関係はイメージしにくい。そこには新たな材料でこれまでにない電子部品に参入し、セラミック部品に次ぐ戦略製品に育てる狙いがある。

「スマートフォン(スマホ)向けの次世代戦略商品だが、具体的には言えない」。7月に村田が発表した富山県の生産子会社に百数十億円で新たな生産棟を建てる設備投資計画。同社はセラミックコンデンサーや通信関連部品などスマホ部品の需要増で相次ぎ設備を増強しているが、この時は珍しく生産品目について口を閉ざした。

「メトロサーク」。富山で生産を計画するのは村田がそう呼ぶ次世代電子部品だ。「配線をつなぐ電子基板の役割を持つが、それ自体にも電気をためられるなど電子部品の側面もある新たなデバイス」(関係者)。村田はメトロサークを次の成長を担う大型戦略製品と位置づけ、約4年前からひそかに米アップルなどに供給してきたようだ。

メトロサークは特殊な樹脂フィルムを最大20層重ねて成形する。積層や成形はセラミックコンデンサーで培った村田の得意技術。だが樹脂フィルムは外部調達するしかなく、様々な企業に当たった末にたどり着いたのがプライマテックだった。同社から調達を続けてきたが、今回の買収で材料から製品までの一貫生産ができるようになった。

メトロサークは既存の電子基板と異なり、厚みが0.2ミリメートル程度と約5分の1で、自由に曲げたり成形したりできるため、スマホなどの隙間に基板をはわせるような使い方ができる。電子部品や半導体を表面実装したり埋め込んだりできるほか、電子部品がなくても基板自体に低容量のコンデンサーやコイルの役割を持たせることもできる。

スマホの薄型化が進む一方、電子基板は決まった形や一定の大きさが必要。スマホのさらなる薄型化や高機能化、バッテリー容量拡大を阻んでおり電子基板の構造見直しが進んでいる。

メトロサークがまず使われるのは通信回路やカメラモジュール(複合部品)とみられる。将来は電子機器から電子基板を不要とし、極小で複雑なデザインなど電子機器の姿を大きく変える可能性を秘めている。

村田は高機能スマホやウエアラブル機器、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器への需要急増を見越し、富山の新生産棟に続く新たな設備投資も検討する。

村田は既存部品の実績や顧客層を生かし他社に先駆け市場を開拓、3年後にメトロサークの売上高1000億円超を目指す。プライマテックはアウトドア衣料品などの防水素材「ゴアテックス」で知られる米WL後ア&アソシエイツグループを母体とする企業。村田も電子部品業界でゴアテックスのような革新を起こせるか。